(第2話)「おくりびと」募集


 映画「おくりびと」を見た。まあ、感想は人それぞれでしょうけれど、何しろ第八一回アメリカアカデミー賞外国語映画賞の受賞作品です。こうしたお葬> 式関係の映画がスポットライトを浴びることはめったにないことです。

 そして、最大の功績は「おくりびと」という言葉を全国標準語にしたことといえます。 

 ある日、ある朝、ある葬儀社が「おくりびと募集」という広告を出しました。今まで「葬儀スタッフ募集」の文面は見たことがありましたが、おくりびとははじめてです。「おくりびと」とは厳密にいえば納棺師のことですが、仕事の内容は最初の死後処理です。

 たとえば病院で亡くなった場合、多くは看護師さんが死後処理をしてくれます。業界用語でエンジェルセットと呼ばれています。お湯やアルコール綿で体を拭き、口、鼻、耳などの穴には脱脂綿を詰め、死化粧の後、新しい浴衣などに着替えます。

 医療行為ではないため保険の適用外ですが、5000円から1万円程度の実費がかかります。この作業を「おくりびと」に依頼すると数倍はかかります。ま、この辺、医療行為の最後として看護師さんにお願いするのか、あの世へ送る最初の儀式とみるのかは遺族の考え方ですね。

 確かに看護師による死後処理と重複する部分もありますが、それはごく一部にしかすぎません。遺族が毛染め、パーマ、マニキュアなどを施し、エンジェルメイクで送りたいという希望があれば看護師ではできません。また、納棺師による着替えの所作には独特の作法と美しさがあります。

 それにね、遺体が変色していたり、あるいは陥没、裂傷、変形などがある場合は復元しなければなりませんし、場合によっては縫合や全身修復をすることもあります。

 おくりびとの仕事は奥が深いですよ。でも、実際は大変そうだなあ。