(第12話)続「三途の川」を渡ろう

   三途の川には渡し舟があり、渡し賃は六文です。
 そして、三途の川には懸衣翁(けんえおう)と奪衣婆(だつえば)という老 夫婦の管理人がいて、六文銭がない場合は衣服をはぎ取ることになっています。
 このような伝承は江戸時代に流行したといわれています。
 さて、六文とは一体、いくらになるのでしょうか。
 一両を一万二千円として換算すると一文は三十円、したがって、六文は百八 十円になります。
 時代劇によくでてくる二八そばが四百八十円になりますから、ま、かなり安 いといえます。
 現在も六文ですので、民営化がなされていないようです。
 これと似た話は古代ギリシャ神話にも出てきます。
 古代ギリシャでは生者の国と死者の国である冥界の境に川があるといわれて います。三途の川と似ていますね。
 この川は舟で渡ります。渡し守はカロンと呼ばれています。渡し舟があるの も日本と同じです。
 カロンの舟の渡し賃は1オボロスです。料金がかかるというのも日本と同じ です。
 ただし、渡し賃は死後、死者の口に1オボロス銅貨を含ませておきます。こ の習慣は日本にはありません。
 では、1オボロスを持っていない死者はどうなるのかといいますと、後回し にされてしまいます。二百年間、そのあたりをさまよってから渡ることができ たといわれています。
 六文銭がない場合、奪衣婆に衣服をはぎ取られていじめられるのと似ていま す。
 1オボロスは現在だいたい千円くらいです。六文銭よりちょっと高いですね。