(第1話)「仏さまを仏にする」のがお葬式 はじまり、はじまり

今回から諸事情により、お葬式の話をすることになってしまった。実は月刊『寺門興隆』という住職向けの冊子の付録に原稿を連載しているのですが、 その抜粋です。いやあ、決して、宣伝しているわけではありませんよ。

さて、それはともかく、そもそもお葬式の目的は何でしようか。それは、ズバリ、「故人を仏の国へ送り、仏にする」ことにあります。当然、宗派によって は別の表現になるかもしれませんが、禅宗に関してはこのように表現して、一応、間違いではありません。ではお葬式の最中、何をしているのかといえば授戒をしているのです。授戒というのは仏弟子となるための儀式です。簡単にいえば、
住職「○○さん、お釈迦さまのお弟子にしてもらうために、いくつかの約束を守るか?」
○○さん「はい」
* ○さんというのは亡くなった人のことですね。当然、故人は儀式中、返事をすることはありませから、お経が読まれて儀式は進んでいきます。

実はぼくたち僧侶はここまでの儀式はすでに終了しています。つまり、お葬式は「お坊さんになるための儀式」なのです。亡くなった方は髪の毛を添って、出家しているのです。知らなかったでしょう。

 そして、禅宗の特徴である引導香語となります。故人の生前の人となりや信条などを漢詩にして、ほめたたええ、最後に「喝」(「かつ」)と叫びます。実際は「かーつ」と聞こえます。禅宗のお葬式の特徴の一つです。それまで眠っていた会葬者が起きることがあります。子供が「びっくりした」と騒ぎ出すこともあります。ま、「悟ったか!」といった意味のことです。

 お葬式で、亡くなった方を僧侶にして、悟りの道に導いているのです。そのご褒美でいただくのが戒名、お釈迦さまの弟子となった証の名前です。亡くなった方のことを「仏さま」といいますが、「仏さまを仏さま(仏弟子)」にするのがお葬式です。