禅寺歳時記 4月 花祭り(はなまつり)

4月8日はお釈迦さまのお誕生日、花祭りです。日本では仏教が公認された聖徳太子の時代、606年から営まれてきた伝統的仏事です。
 この日、花御堂(はなみどう)が登場します。小さな御堂の屋根は花で飾ります。中にはお釈迦さまの誕生した姿をした誕生仏が安置されています。
 この姿は生まれてすぐに七歩あゆんで「天上天下、唯我独尊」(てんじょうてんげ、ゆいがどくそん)と言って、右手で天、左手で大地を指したといわれている姿です。
 七歩には六つの迷いの世界(地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人間・天)を脱却し、悟りをひらいたという意味があります。
「天上天下唯我独尊」は直訳すると「この世で私が一番優れている」となりますが、そうではなく、「私もあなたもかけがいのない"いのち"を持っているのですよ」ということです。現代語に訳せば「すべてのとうとい'いのち'を大切にしましょう」ということです。
 そして、法要中、誕生仏に甘茶をおかけします。
 お釈迦さまがお生まれになった時、不死の霊薬である甘露水(かんろすい)が降り注いだといわれています。この故事が甘茶の由来です。
 甘茶は、アマチャ(ユキノシタ科。アジサイの変種)またはアマチャヅル(ウリ科)の葉を蒸してもみ、乾かしたものです。非常に甘く、甘味料などとして使われることもありました。
 平安時代は仏(誕生仏)に甘茶を灌(そそ)ぐことから、灌仏会(かんぶつえ)といわれていました。そして、「花の日」「春山入り」などと呼ばれた日本の風習が、灌仏会のために花を摘んで、花を供養する「花供養」という祭になり、明治時代、浄土宗で灌仏会のことを「花祭り」と呼ぶようになったのがはじまりです。
 4月8日、次のことをじっくりと考えましょう。
 1.お釈迦さまの誕生日を心からお祝いしましょう。
 2.お互いの持つ大切な"いのち "に手を合わせましょう。
 3.今ある"いのち "を大切に生かしていきましょう。
 「天上天下、唯我独尊」とは「今ある"いのち "に感謝し、"いのち "を人のために使っていきましょう」ということでもあるのです。
 そうだ「花祭り」にもテーマソングがあります。
「おはなみどうの おしゃかさま きょうは あなたのたんじょうび うれしい うれしい はなまつり みんな たのしくおいわい いたしましょう」
 うーん、クリスマスソングに比べると随分、地味です。だからといって「SYAKAのベィビー」という曲を流すわけにもいきません。地味ですが、お祝いいたしましょう。