禅寺歳時記 12月その1 成道会(じょうどうえ)

お釈迦さまは紀元前四六三年(諸説あり)四月八日、ヒマラヤ山脈の麓、ルンビニー(現在のネパール領タラーイ盆地)で産声をあげました。父は釈迦国の王シュッドーダナ母はマーヤーです。マーヤーはお釈迦さまを産んで七日後に亡くなってしまいますが、その後、何不自由なく生活し、美しい妃を迎えかわいい男の子にも恵まれます。しかし、二十九才の時、まわりの反対を押し切って、一大発心し、出家してしまいます。
 当時名だたる二人の仙人を訪ね教えを求めるのですが、満足のいく答えは得られず、断食などの苦行が続きます。
「苦行では悟れない!」
 六年後、このことに気づいたお釈迦さまはプラーグポーディ山を下ります。そして、ナイランジャナー河で体を洗い、村娘スジャータの捧げるミルク粥で体力を回復し、ブッダガヤーの菩提樹の下でひとり坐禅をし、一週間後の12月8日にさとりをひらきます。これを成道といいます。三十五歳のことでした。
  このお釈迦さまのお悟りに感謝するのが12月8日に行うのが成道会です。
 苦行をやめ、やせ細ってフラフラしているお釈迦さまの姿を描いた絵、釈迦出山図(しゃかしゅっさんず)が本堂に登場します。腹が減ってヨタヨタしているのではありません。ひたすら道を求める気迫と、希望とが描かれています
 この歴史的事実からはじまったのが禅宗です。さとりはお釈迦さまが創作したものではありません。最初に気づかれたのがお釈迦さまなのです。そして、お釈迦さまと同じさとりが私たちの心の中に宿っています。
 私たち臨済宗(禅宗)の修行道場では年に八回程度の一週間の坐禅集中期間がありま す。これを接心(せっしん)といいます。しかし、12月の接心は月の別名から臘八(ろうはつ)の接心と呼ばれ、「命知らずの接心」といわれています。通常の接心では一日に三時間くらいの睡眠をとるのですが、臘八の接心では一週間を一日に見立てるため、布団を 敷くことは許されません。「お釈迦さまのように悟りをひらくぞ」と決死の覚悟で臨みます。
 さて、成道会の日、まず、お釈迦さまがさとりをひらかれたことに感謝し、手を合わせましょう。そして心と呼吸を調え、次のことを静かに振り返ってみましょう。
 1.あなたにとって師とは誰ですか?
 2.あなたの教えとは何ですか?
 3.支えとなる仲間はいますか?
 それとも山中でさまよったままですか。