禅寺歳時記 12月その2 除夜の鐘(じょやのかね)

いよいよ除夜の鐘です。大晦日の夜のことを年越しといいますが「除夜」ともいいます。この除夜に寺院でつく鐘のことを除夜の鐘といいます。言葉の響きとしては「年越し鐘」より「除夜の鐘」、「除夜のそば」より「年越しそば」ですよね。
 そもそも除夜の鐘の起源は中国の宋時代の禅寺にあります。当時は朝夕の一日二回、百八つの鐘をついていたそうです。これが鎌倉時代の禅寺に勤行として伝えられます。しかし、室町時代になると除夜にだけつくようになります。そして、いつの間にか百八つの煩悩を生滅するためだと解釈されるようになったということです。
 では、どうして百八つなのでしょうか。いくつか説がありますが二つ紹介しましょう。
 一つは「四苦八苦起源説」です。私たちを悩ます根源を仏教で四苦八苦といいます。実際は合計八つの苦しみのことですが、次のように計算してしまいました。
「四苦八苦」を「四九八九」と変換。そして、「4×9+8×9」となり、「36+72=108」となります。
 二つめは「煩悩発生原因説」です。煩悩が発生する身体や心などの機能、思い、時間などから導きだされた計算方法です。次の4つをかけ合わせます。
  ①煩悩を生む人の六感覚機能(目・耳・鼻・舌・身体・心)
  ②六機能が感じる三つの思い(好き・嫌い・同じ)
  ③三つの思いの二つの内訳(きれい・きたない)
  ④煩悩を発生させる三つの世界(現在・過去・未来)
 というわけで、まとめると、「6×3×2×3=108」となります。
 さて、そこで提案です。除夜の鐘を聞きながら、自分の煩悩をはきだしてみましょう。 
  ごん〜んんん〜。「年を取るのやだよー」
  ごん〜んんん〜。「今年も新車は見送りかあ」
  ごんーんんん〜。「畳替えできなければ女房だけでも替えちゃおうか」
  ごんーんんん〜。「海外旅行に行きたかったなあ」
 そして、愚痴や苦悩、煩悩は次のように処理しましょう。
   1、鐘の音が消えるのと同時にあきらめる。
   2、忘れる。
   3、振り向くのをやめる。
 除夜の鐘でいやなことは忘れ、今、生かされていることに感謝し、前向きに新年のスタートを切りましょう。  
 そうそう、それから、除夜の鐘を聞きながら、愚痴がなくなったら、新年に燃えるテーマを熱く語りましょう。