平成22年6月 釈尊の教えはどのように弟子に伝わったのか

釈尊の教えが伝わっていくその様子は、公案集の一つ「無門関」(第六則:「世尊拈華」(せそんねんげ))に著されいている。
「世尊、昔、霊山(りょうぜん)会上(えじょう)にあって、花を拈(ねん)じて衆に示す。是の時衆皆黙然たり。惟、迦葉(かしょう)尊者のみ破顔微笑(はがんみしょう)す。 尊者曰く、吾に正法眼蔵、涅槃妙心、実相無相、微妙に法門あり。不立文字、教外別伝摩訶迦葉の付嘱す。」
ここに記されたことは次のようなことです。
釈尊が中部インドのマカダ国の首都・パトナ市で伝道していた時のことです。郊外にある霊鷲山(りょうじゅせん)で説法の座についた。釈尊の教えを聞くために、多くの弟子や人々が集まっていた。しかし、しばらくの間、言葉は発せられなかった。
 釈尊は金色の蓮華を一本手に持って黙っておられた。皆がどうしたであろうかと思ったその時、釈尊はその花を左右にちょっとひねってみせた。それだけで、言葉はない。皆ただキョトンとするばかりである。
その中で、ただひとり、高弟の迦葉がにっこりと微笑んだ。
すると、釈尊は次のように言われた。
「私には、正しく真理を見る眼、大いなる悟りの心、形としてとらえることのできない不可思議な教えが備わっている。それを文字や言葉ではなく、心から心へ迦葉に伝わった」
釈尊は、にっこり微笑んだ迦葉(かしょう)に法門(仏教の教え)を伝授したのである。
釈尊の教えは、基本的には、口伝と文字によって伝えられる。だが、禅の世界では、教えの奥義は文字や言葉では伝えられないギリギリのところが基本の教えであるとされます。
そこのところは、どんな世界か?  気付かれた方は、幸せなことでしょう。
世界中のみんなが笑えるような説法とは何でしょうか?みんなに教えが伝わること、これが皆様を導くみちなのでしょう。