禅寺歳時記 9月 秋の彼岸会(ひがんえ)

 彼岸の説明については3月の「春彼岸」を見てください。ここでは、それ以外のことにつてお話しします。
 まずは「ぼたもち」と「おはぎ」の違いです。
 お彼岸に登場する食べ物といえば「ぼたもち」と「おはぎ」がありますね。同じものですが名前が違います。この違いには次のような諸説があります。
(春と秋の違いから)
 春に咲くのが牡丹、秋が萩のため、春に作るのが「ぼたもち」、秋は「おはぎ」となった。
(形の大小の違いによって)
 牡丹の花のように大きく作ると「ぼたもち」、萩の花のように小ぶりにすると「おはぎ」
(餡の形状で区別)
 春は小豆が固いため、皮をしっかり取ってこし餡(ぼたもち)、秋は収穫した小豆が柔らかいためつぶ餡(おはぎ)となった。
(餡の違いで区別)
 餡をつけたものを「ぼたもち」、黄な粉をまぶしたものが「おはぎ」。地方・時代・店などによって異なりますが、季節や作り方に関係なく「おはぎ」と呼ぶことが多いようです。小豆の赤が邪気を払うことから、お彼岸に食べるよう
になったそうです。
 それから、もうひとつ、秋の彼岸に咲く彼岸花のお話しもしましょう。
 彼岸花は秋の彼岸の時期に合わせたように咲き、白と赤の二色があります。彼岸花には曼珠沙華(まんじゅしゃげ)という美しい別名があります。仏典では慶事の前兆に天から降ってくる赤い花のこと
だといわれています。
 しかし、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)などという別名もあります。
 昔、飢饉の時に食用にするため、墓地のそばに植え、不吉な名前をつけ、手をつけないようにしたためではないかといわれています。彼岸花の球根部分にはアルカロイドという毒があり、この毒を水にさらして抜き、非常食にしたのかもしれません。
 間違っても食べてはいけません。
 これは「生きるための知恵」です。現在の私たちはこのような「生きるための知恵」とは無縁な生活をしています。この点については感謝しなければいけませんね。